プロジェクトJAPAN:アジアの反応は日本人がイメージしてるのとは随分違う

 NHKの話を書いたついでに、NHKの番組にどうして違和感があったかというのを説明する程度の話だと思ってもらえばいいかも。国が違うと反日とか親日といっても随分意味や様子が違う。だから国が違えば同じ反日でも内容は別物。まずこれ大事。さらに、日本人がイメージしている右翼とか左翼とかと親日反日はまったく関係がない。これも大事。まあ、以下に適当にその違いみたいなのを書いてみる。
 まず、韓国の場合、反日といったら、現在の日本の政府も政治も否定している。つまり日本で言うような、戦前が悪かったとかWW2が悪かったとか、日露戦争まではよかったとか、いやいや、日露戦争も問題があったとか、そういう話ではなくて、まず現状の日本政府も否定してるので、どこが問題であるとかいう認識は薄い。韓国の場合WW2以前に合併されているので、そもそもWW2だけが悪いとしては合併を問題視してる立場上おかしなことになるので、そういう解釈はありえない。次に韓国の親日だが、韓国の親日というのは特別な一つのレッテルで、犯罪者にも等しい。親日派を断罪する事後法なんかも作ってて結構この辺は徹底している。従って日本人がイメージする親日的な人も自分は親日派ではないと言うと思う。現在の日本人は好きだったとしても現在の日本政府も含めてWW2以前から日本政府は総じて嫌いというのが一般的。最も親日的だったとしても戦後の政府はいいけど戦前の政府は全てダメというのが多い。少なくとも日本を肯定してはいけないという社会的な風潮がある。本質的には親日の人は多く、知識階層にはむしろ日本で言えば右翼的な部分を日本人より強く持ってる人もいるが、それを表に出すと危ないという構造があるようだ。逆に知識がない人は、そもそも、戦前に日本が民主化していたという事実を知らない人が多く、戦後アメリカによって選挙や議会などの民主的な方法が導入されたと思っている人が多いくらいで、あまりに日本を知らない。
 次に台湾の場合、反日親日という感覚はそれ程強くなくて、比較論で話をするのを良く見る。そこで比較されるのは近い時代に中国と日本という二つの支配者があった台湾ならではともいえるけど、日本人の感覚からすればかなり親日という感じを持つ程度には親日的。まあ、親日反日より、哈日排日の方が適切かもしれないが。台湾の親日的な人の話を見ていると沖縄の人を見てるような感覚に近い。沖縄の人は戦争は反対で沖縄戦の苦しみがあった、それを日本人に謝ってほしいとは思っているわけでもないし別に攻めているわけじゃないけど、日本国民にそれを分かっていて欲しいというような表現が良く見られる。同様に台湾人にもそれに近い表現をする人が結構いる。中国の国民党との戦いが台湾で起こりそれが沖縄戦のようなイメージで台湾人には重要事項なのだ。沖縄は返還されて、台湾は返還されなかったわけだが、台湾人は何故日本が台湾を見捨てたのかというような感じやその時の台湾の苦しみを理解していて欲しいという複雑な表現なのだ。その後の共産党のと戦いもあり、日本を否定も出来ないし肯定もできないそういう複雑な感情を抱いてると思ってそんなに間違いない。こう言う人の意見はNHKの番組とは違った意味で何だか色々思わずにはいられない部分があって自分たちの実際の生活や戦いを中心にそういうのを語る人のリアリティっていうのは、嘘情報じゃそう簡単に再現できない。逆に反日の場合は台湾人というより外省人ではないかと思うが、そういう人ですら共産党アメリカ日本という関係からそれ程単純な感じではない。
 次に中国人の場合は、そもそも日本の戦争は軍部の暴走だったという事でかたをつけているので、今回の番組が本質的に問題にはなりにくいと思う。そういう意味でNHKのあの番組でインタビューに答えている人が「NHKのバックには中共がいるのだろうか」*1と思うのも無理はない。日清戦争日中戦争などは幾分か複雑だが、そもそも中国にとってはWW2は日中戦争も含めているのでパールハーバが開始ではなく、盧溝橋事件から既に同じ戦争なっている。日本の立場から行くと日本が戦争していたのは国民党や清であって共産党ではないので、厳密には共産党と本格的な戦争状態にはなっていないといっても良いが、共産党としては日本を退治したというのが政府の正当性みたいなものにもなっているので色々変な事になってる。つまり、当時の中国国内に共産党と国民党、清が同時に存在した事で、その辺は結構都合よくしておかないと難しいのだろう。結果的に軍部の暴走論を取って天皇の責任を問わなかった立場上、司馬遼太郎史観(といっていいのかは大いに疑問だけどとりあえず)といわれるような、日露戦争までは美化してもいいというのでも中国にとってはそれ程不都合ではない。中国ではアメリカによって日本が敗戦を迎えた事は殆ど無視されているので、中国は勝ったにもかかわらず大国だから日本を許してやったという印象操作をしていて、この辺は中国人の妙な日本に対する自負心みたいなものとも連動している。結果的に日本のWW2は軍部の暴走という話は連合国側にとっては天皇の問題も含めて処理するのに、とても都合がいいのでアメリカや中国ではこの理屈で通すことが多い。
 今回のNHKのはそういう意味では米中のWW2総括方法に極めて近いが、それを台湾の人の目線でやってしまうと台湾人は違う視点があるので、色々な矛盾が吹き出てしまう。現実はやっぱりそんなに単純じゃなくて、仮に軍部暴走説を主張するとしても当時の日本の新聞記者の人がインタビューで答えていた別のNHKの番組があったが、ああいうものや、当時の日本国民の226事件の捉え方などを複合的に加えて初めて説明に確からしさが持たせれる。そういうレベルの話なので、教科書に書いてありました見たいなのをそのままやると、海外の人の視点で見た場合と日本の教科書的視点の食い違いで理屈が破綻する。そういう意味ではNHKの番組でまずかったのは台湾を普通に教科書視点で取り上げてしまった点にある。台湾はアメリカと中国の問題の場所なので、連合国視点を取ったとしてもアメリカと中国で意見が食い違う場所が台湾なので、台湾は連合国視点のまさにハザマというか隙間というか、まあ、そんなの自分程度が知ってる事なので、詳しい人なら常識だろうとは思うけど、どうもあの番組は視点の狭さが透けて見えてしまったなという感じがする。
大型プロジェクトだというなら、そういう事情を単純に全部さらけ出して後は見てる人に考えてもらうって方が遥かにいい選択だったと思われる。

*1:これはコメントで書かれたところの先でインタビューされた人の知人が当人に確認してみたらそういっていたという話がソースなので信憑性はないが台湾人の反応としては妥当性はある