政治闘争としてみる「もののけ姫」

久しぶりにTVでやっていた「もののけ姫」を見ていて政治闘争としてみたらこれは面白いなぁと気づいたので何となく書いてみる。ただ、実際の政治がどうこうという話しではないのでそこは勘違いされないように初めに書いておくけど、現実のどの勢力がどれとかそういうレッテル張り的なことはしたくない。単純にもののけ姫の世界を現代の政治の見方で眺めて見るというだけの話。では、まずもののけ姫の世界の権力の構造を現代の分類でみてみよう。

もののけ姫保守主義勢力

古くからの習慣・制度・考え方などを尊重し、急激な改革に反対すること

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E5%AE%88

森に住むもののけ達は、木を切り倒す人間に反発しており、森を変えることに抵抗しているので、基本的には変化に対して否定的な保守勢力といっていいだろう。しかも興味深い事に「もののけ」の勢力の中にもちゃんと現代的な政治勢力の分類が含まれている。例えば全体主義的に森は一蓮托生と思っており血気盛んで攻撃的なイノシシの勢力。しかもその勢力には恨みのあまり祟り神となってしまっていたり、その昔の恨みがふつふつと煮えたぎっている保守という点は興味深い。一見似たような勢力だが、長期間に渡り戦い続け抵抗を続けてきたがジリ貧となっているモロの一族は気高く描かれており、猪よりは多少現実の戦いの結果を見て達観している部分がある。また猩々のように木を植えることで穏やかに、しかし確実に元に戻そうという一見穏健派のように見えるが人間には強い憎悪を持つ勢力もある。さらに森に依存はしているが特に何も考えてないかのようなコトダマ。どこか宗教的な尊敬を受けて、強烈な力と求心力をもち森の霊的な力の中心でもあるが本人は特に何もしないシシガミなどなど、どこかで見たことがあるような政治によくある構図が並んでいる。

もののけ姫進歩主義勢力

世代を重ねるごとに国家及び社会全体が抱える矛盾を高まる知識と道徳によって変革していくことにより理想に近い体制へと前進しようとする思想

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%B2%E6%AD%A9%E4%B8%BB%E7%BE%A9_%28%E6%94%BF%E6%B2%BB%29

えぼしが率いるタタラバの勢力は森を切り開き変化を起こして生活を豊かにしようとしている。もののけ姫の世界では先進的な体制の集団であり、進歩主義勢力といえる。しかもエボシ達はかなり弱者への社会保障を重視する集団なので、現代的に言えば社会福祉を重視する勢力なのだ。ただし、こちらも保守勢力同様統一はされておらず、ジコ坊や石火矢衆などは弱者への配慮も特になく、単に保守勢力の象徴を切り崩す事だけをもくろんでおり、経済優先だったり権力の奪取を優先している勢力が混ざりこんでいる。

もののけ姫の中立勢力
地元の大名という設定のアサノはタタラバの鉄を奪いに着ているが、必ずしも森を切り開いたり森と敵対する方向に向いていないので進歩主義でもない。リベラル的な勢力なのかもしれないが、やっている事は結果的に森を守る事にはつながっているので、旧来の保守を違う見方でみせている新保守主義的な側面もある。

■エンディング
もののけ姫をそんな目線で見ていたら、面白いのはタタラバはサムライに襲われてしまい進歩主義勢力がタタラバに立てこもりだす。そんな風に見てたせいか、まるで安保闘争のような雰囲気。進歩主義勢力がもののけをシシガミの森へ追い詰めたように見えて逆にシシガミの力に飲み込まれていく。そして面白いのは、最後のエンディングには、太陽信仰のようなものが出てくる。シシガミも太陽の光に当たれば消えてしまい太陽の光とシシガミの力で植物が芽を出す。結局太陽の力の前に再スタートして晴れ晴れと勢力争いは終わるという。政治を見てたら急に圧倒的な宗教の力で終わってしまったという何とも不思議な気分がした。